とにかく今回の『高菜販売休止』の一件は、良くも悪くもとても勉強になった。今回のブログでは、印象に残ったことをいくつか記録しておこうと思う。
『売り切れ商法』の片鱗を味わった。
まず1番印象深いのはこれだろう。
『売り切れ商法』という言葉があるのか?と思い、検索してみると『品薄商法』という言葉と同義だと知った。ならばと品薄商法について調べ、読み進みていくと、何やらあまり良いイメージではないようだ。悪徳業者の常套手段みたいなので。
つまり、意図的に商品を品薄状態にして、限定感を煽り、希少価値を生み出す。そうすることによって、店頭に商品が並べはすぐに売れてしまう。更には、少ない商品を求めて情報が飛び交い、または意図的に発信して、バイラル的に噂や話題が広がっていき、結果的に大きな宣伝効果を生み出す。
品薄商法……なんてえげつないのだ!
よく同業のラーメン屋さんでも、「スープが無くなったので終了」とか「麺が売り切れたので閉店」とか言って1日の営業を終了するお店がある。御多分に洩れず友理でも過去何度も麺が売り切れてしまって閉店したことがあったが、これも品薄商法なのか?と言えば、この場合はノーである。
ポイントは『意図的』なのかどうか?というところ。
ラーメン屋さん関しては、売れれば売れるだけ売り上げも増えるので、本音では売り切れてしまうのはなるべく避けたいのだろうけど、日常的にそうなってしまうラーメン屋さんは、店主さん、従業員さんたちの体力的問題、仕入れや仕込みに対する考え方、同時に売り上げに対する考え方、なによりラーメン自体の物理的な問題などなど店主さんの総合的な経営判断によるところがある。
つまり出し惜しみはしていない。全力でその日の営業を駆け抜ける。結果的に売り切れてしまうのだ。
しかしながら、日常的に売り切れるというのは「人気店」だと思われるだろうし、売り切れれば閉店ガラガラとなることが噂として広まっているなら、冒頭の品薄商法に似た効果を発揮していると言えば、イエスかもしれない。それに経験上、売り切れたら終わり!というのは、1日の営業の締めとしては、とても気持ちがいいことも付け加えておこう。
では、今回の『高菜販売休止』の件は品薄商法なのか?
いやいやいやいや 笑笑 そりゃあなた違いますよ。だって売り切れてしまったら、その後はしばらく「無い」のだから。品薄の継続性がない。
出し惜しみなんてもってのほかで、売れる見込み以上に準備はしておきたいし、いつもそうしていた。そうするために、時間や材料の調達を工面して、なるべく売り切れないように、つまり買いたいお客さまに対してお渡しできないというご迷惑をおかけしないように、仕込みに対して必死に取り組んだ。
しかしながら、材料の入荷が無いのだから作れない。お手上げ状態なのよね。
とはいえ今回、意図的でなくても “売り切れ” となる商品があることをアナウンスしたら、もちろんこれは親切心からだが、通常以上に売れてしまったところを見ると、売り切れ商法の片鱗を味わったと言える。全く買ったこともない、食べに来たこともない人からのお問い合わせの電話もあったくらいだから。
でも、「売り切れって言ったおかげでたくさん売れた」と豪語するほど殺到したわけではない。じわじわ増えた。そんな感覚。当初懸念された「大量に買い占める人」はあまりいない。いるのは1つ多めに買う人たちだ。いつも1つだけど、もう買えないのならもう1つ。いつもは2つだけど、今日は3つ。。。また、これまで買ったことはないけど、売り切れちゃうなら試しに1つ買ってみようか。。。といったような、1つずつ多くお買い求めのお客さまが実に多いこと。だからじわじわと増えたのだ。
じわじわと増えた様子は前回のブログで書いています
伝えるべき人に伝わっていない。
加えて、今回は情報の発信の仕方、特に伝えるべき人にどうやって伝えるべきか?ってことを考えさせられた。SNSで情報をキャッチした人もじわじわとご来店してくれたが、大量に買っていくワケではないし、お取り置きを願うような連絡もないし、我先にとお買い求めするような人もいなかった。おそらくSNSで情報を知って来る方はみんな優しい。買い占めたら他の人に申し訳ないという気持ちもあるのだろう。そもそも遠方の方は、友理の高菜がない生活の方が長いのだから、無いからといって生活は変わらない。わざわざ買いに行くほどの騒ぎではない。
むしろご来店されてから張り紙を見て状況を知ったお客さまの方が圧倒的に多く、いつもより1パック多く買っていかれた人たちは、ご来店して初めて知った人たちがほとんど。
こちらが発信する情報というのが、伝えたい人に伝わっていない状況が明らかに。毎日毎日SNSで発信しようが伝わってなければ意味がない。伝えていないのと同じなのだ。親切心からだ…とはなんと自分よがりなのだ。

2018年10月20日時点
早ければ今日中には。
遅ければ明日まで。
思い立ったが吉日。
後悔先に立たず。
開店。#友理なう #友理の高菜 #黒板同盟 pic.twitter.com/kQFKyolCiF— 立野 征博(友理のまささん) (@masa_9ramenyuri) November 1, 2018
売り切れると予想された日も、SNSでは「まだあります」と発信し、店内の黒板にも手書きで「まだあります」と買いておいたが、営業中の混乱を避けようと店内の高菜関連のPOPを取り外し、【高菜販売休止中】とわざわざ書かれた新しいメニュー表に切り替えた。すると途端に高菜のご注文はパタリと止まり全く売れなくて、結果的にその日は売り切れることなく、翌日まで残ってしまった。
店内の高菜関連POPを取り外し、メニュー表を変えただけで、ご注文が止まった。
逆を言えば、店内にPOPが貼ってあればご注文が入った。
しかしウケる。黒板や口頭では『お持ち帰り用のパックはまだあります』と伝えてるものの、高菜の関連のPOPを撤去し、新しいメニュー表には「高菜販売休止中」と明記。するとどうだろう。高菜のご注文が全く入らない笑笑 こんなにもPOPやメニュー表など、目に入る文字やアナログな情報の方が効くとは!
— 立野 征博(友理のまささん) (@masa_9ramenyuri) November 2, 2018
SNSの発信は、どちらにしろさほど影響はなかった。7〜8年毎日欠かさず発信を続けていてもこの有り様。1年やそこらで効果が出ないと嘆くのはまだまだ時期尚早だよ。すごく遠回りで、すごく効率の悪い情報発信だったかもしれないけど、おかげでたくさんの事例やすごく大切な人たちの繋がりを得ることができたのは大きいし無駄なことではないと思う。
必要とされる商品を育てよう。
総じて、今回の一件で感じたことは、お客さまやSNSでボクが発信する情報をキャッチし得る方々の中で「友理の高菜」の必要度は思った以上に低いということ。
そりゃそうだ、なきゃないで生きていけるもの。高菜なんかなくたってご飯は食べることができるし、ビールのつまみだって無限にある。
つまり日頃のご注文数の人気度やSNS上でのチヤホヤされっぷり、そして自分の仕込みの忙しさなどなどを通して「必要度が高い」と勘違いしていたのだ。
このことに気がついただけでも良かった。でも、必要度が低いというのはまだまだ伸びしろがあるっということ。可能性は無限大だ。
高菜に関してに限らず、あらゆる商品の情報を発信するにしても、POPを作成するにしても、それを必要とする人に届くように発信しなければならない。これは徹底的にやるべきだ。
もっと勉強せねばならない。
もっと必要される情報を発信して、キャッチしてもらわなければならない。
そして、
もっとモノを売れる人間にならねばならない。もっと学んで、経験してその想いを品薄にしてはいけない。
このブログの内容は、先にnoteでお話しております。